紡ぐ月

雑多

ネットカフェの夜

ネットカフェの夜

 週末の夜、賑やかな街の中にあるネットカフェに入った。今日は家に帰る気力がなかった。仕事のストレスや友人との些細な喧嘩が重なり、心が疲れ果てていた。ドアを開けると、パソコンの明かりが点在する暗い空間が広がっていた。静かな店内には、キーボードを叩く音だけが響いている。

 受付でカウンターの女性に身分証を見せ、個室を借りる。自分の部屋番号が書かれたカードキーを受け取り、狭い通路を歩いて個室へと向かった。小さな部屋には、リクライニングチェアとパソコン、そしてテレビが備え付けられている。周りの音を遮断するために、ヘッドフォンも置かれていた。

 部屋に入ると、まずはリクライニングチェアに座り、深呼吸をした。小さなスペースだが、ここが今夜の避難場所だ。パソコンを起動し、何気なくネットサーフィンを始めた。好きな動画を見たり、SNSで友人の近況を確認したりするうちに、少しずつ心が落ち着いてきた。

 「今日は、ただここで過ごすだけでいい。」そう自分に言い聞かせ、何も考えずに時間を過ごすことにした。

 しばらくして、お腹が空いたことに気づいた。ネットカフェのメニューには、軽食や飲み物が豊富に揃っている。カウンターに行き、カップラーメンと缶コーヒーを注文した。店員が温かいラーメンを手渡してくれると、その香りが心を癒した。

 部屋に戻り、カップラーメンの蓋を開けると、湯気が立ち上る。スープを一口飲み、体が温まるのを感じた。リクライニングチェアに再び腰を下ろし、テレビで映画を流しながらラーメンをすすった。その瞬間、何かが解放されたような気がした。

 映画が終わる頃、時計は深夜を回っていた。パソコンの画面を消し、椅子をリクライニングにして眠りにつく準備をした。静かな店内で、遠くから微かに聞こえるキーボードの音が心地よい子守唄のように感じられた。

 布団代わりのブランケットに包まれながら、目を閉じた。ネットカフェの狭い空間だが、この場所には自分を守ってくれる安心感があった。今日はもう、何も考えずに眠ることができる。

 目を覚ましたのは、朝の光が窓から差し込んできたときだった。ネットカフェの朝は静かで、まだ眠っている客たちの気配が感じられた。私は起き上がり、軽くストレッチをして部屋を後にした。

 受付で料金を支払い、外に出ると、清々しい朝の空気が迎えてくれた。昨夜の疲れが少し取れた気がした。ネットカフェの一夜は、思った以上に心地よいものだった。

 「また、ここに来ることがあるかもしれないな。」そう思いながら、私は自分のペースでゆっくりと家へ向かった。ネットカフェの夜は、私にとって新たな避難所となったのだ。