紡ぐ月

雑多

忘れられた庭

忘れられた庭

村の外れに、誰も近づかない古びた屋敷があった。そこは長い間、人々の記憶から忘れ去られていた場所だった。幼い頃、私と友人のアキラはその屋敷を「忘れられた庭」と呼び、冒険の舞台にしていた。

ある夏の日、私たちは再びその庭に足を踏み入れた。雑草が生い茂り、古い噴水は苔むしていた。屋敷の窓は割れ、扉は錆びついていた。私たちはその廃墟の中で、宝物を見つけることを夢見ていた。

「この屋敷には昔、裕福な貴族が住んでいたらしい。何か貴重なものが残っているかもね。」

アキラの目は輝いていた。彼の冒険心は私にも伝染し、心が踊った。私たちは慎重に屋敷の中を探索し始めた。古びた家具、壊れた食器、散らばった書類——すべてが過去の名残を感じさせた。

屋根裏に通じる階段を見つけたとき、私たちは興奮を隠せなかった。木の階段はギシギシと音を立て、少し怖かったが、それが冒険のスリルを増した。屋根裏部屋に入ると、薄暗い光の中に古いトランクが一つだけ置かれていた。

アキラは慎重にトランクの蓋を開けた。中には、古い日記と一枚の鍵が入っていた。日記は丁寧に綴られた文字で埋め尽くされており、貴族の娘が書いたものだった。彼女の名はリディア。彼女の日記には、彼女がこの屋敷で過ごした日々や、秘密の部屋のことが書かれていた。

「秘密の部屋だって!それを見つけたら、もっとすごいものがあるかも。」

アキラの言葉に、私は再び心が踊った。私たちは日記を手掛かりに、その部屋を探し始めた。屋敷の隅々まで探索し、ついに地下室への隠し扉を見つけた。鍵穴にトランクの鍵を差し込み、扉を開けると、そこには古びた本棚が並んでいた。

「これが秘密の部屋か。」

アキラが興奮気味に言った。私たちは本棚を一冊一冊調べた。すると、棚の奥に小さな木箱が見つかった。その箱を開けると、中には美しい金のブレスレットが入っていた。それはリディアの大切な宝物だったのだろう。

「これが彼女の秘密の宝物だったんだ。」

アキラの声は感動に満ちていた。私たちはそのブレスレットを手に取り、屋敷を後にした。村に戻ると、私たちはリディアの日記とブレスレットを博物館に寄贈することにした。そうすることで、彼女の物語が再び語り継がれることを願っていた。

数年後、村の博物館にはリディアの展示が設けられ、彼女の物語は多くの人々に知られることとなった。忘れられた庭と呼ばれた屋敷は、再び人々の記憶に蘇り、リディアの名前は永遠に語り継がれることとなったのだ。

「忘れられた庭」が再び輝きを取り戻すまでには、多くの年月がかかった。しかし、その場所には今もなお、幼い頃の冒険心が息づいている。リディアの物語は、私たちにとっても特別な思い出となり、心の中に深く刻まれている。